投稿日:2013年8月12日|カテゴリ:話題の最新歯科情報

私たちの歯とその歯を支える骨との間には、歯根膜と呼ばれる歯と骨をつなぐ靭帯のような役割を果たす組織があります。この歯根膜は、ものを噛んだりする際のクッションの役割や、食べ物の硬さを感知するセンサーの役割や、まわりの歯や骨を保護する役割も果たしており、自然な噛み心地を得るためには非常に重要な存在です。そのために歯根膜が損傷を受けてしまうと、歯がグラついたり、あるいは歯の根そのものが、腐ったりすることがあります。

 

歯の冷凍保存

このように重要な役割を果たす歯根膜が生きた状態の歯は、いったん抜いた後であっても再植することにより自然な噛み心地を再現することが可能になります。広島大学歯学部の研究室では、そのような歯と歯根膜を冷凍保存する技術の開発に成功し、その技術によって2012年の5月より全国で初の「歯の銀行」を事業化させています。

 

この事業は、不必要に存在する親知らずや、矯正などによって健康な状態で抜いた歯を「歯の銀行」に預けて冷凍保存し、年をとってから、歯周病などで必要な歯を失ったときに、保存しておいた自分の歯を移植できるというシステムです。冷凍保存の対象となる歯は、上下4本の親知らずと、上下8本の小臼歯の計12本で、2012年の5月の運営開始から既に200本以上の歯が冷凍保存されています。また、歯の銀行事業は、医療廃棄物の減少にも一役買っています。

 

歯の冷凍保存

気になる費用ですが、40年間の保管に必要な金額は、歯一本あたり3万円で、その歯を再植する治療費用と、歯を抜く費用をあわせて13万円程度かかりますが、将来的に自分の歯が悪くなって抜くとはかぎらず、再植しても100%成功するわけではないので、その辺がネックとなるでしょう。現在、治療を行うには、広島大学へ全ての患者さんに来院してもらわないとなりませんが、これでは患者さんとって交通費や時間の負担が大きいので、近くの歯科医院で治療が可能になるように、宅配業者によって冷凍保存した歯を搬送するシステムを整備しているそうです。